要旨
AIエージェントが他のモデルや人間とともにマルチエージェント環境で稼働する機会が増えるなか、プロンプト内に提示された意見に対してエージェントがどのように反応するかを理解することは、こうした相互作用の帰結を予測するうえで決定的に重要となる。本研究は、AIエージェントとして機能する大規模マルチモーダル言語モデルにおける同調様行動、すなわち集団の意見に合わせようとする傾向を検討する。社会心理学の古典的な視覚実験を応用することにより、これらのエージェントがプロンプト中の社会的シグナルにどのように反応するかを調査した。実験の結果、AIエージェントは社会的インパクト理論と整合する体系的な同調バイアスを示すことが明らかになった。その反応は、多数派の規模、集団の全員一致性、課題の難易度、ならびに知覚された権威や集団成員性の共有といった情報源の特性によって変化する。重要なことに、単独ではほぼ完全な成績を達成するAIエージェントが、社会的影響による操作に対して極めて脆弱になる。この脆弱性はモデル規模を超えて持続する。すなわち、より大規模なモデルは単純な課題では同調バイアスの低下を示すものの、課題が困難な場合には依然として脆弱なままである。これらの知見は、悪意ある操作、誤情報キャンペーン、他のモデルや人間との相互作用におけるバイアスの伝播を可能にしうる、AIエージェントの意思決定におけるセキュリティ上の脆弱性を明らかにするものであり、AIの実運用における安全対策の緊急の必要性を浮き彫りにしている。主要なポイント
- 単独では単純な視覚的質問にほぼ完璧に答えられるAI視覚言語モデルも、プロンプト上で他の「参加者」が誤答を示している場合には、誤答へと押し流されうる。12種類のオープンソース・マルチモーダルモデル全体で、誤答確率は最初の数名のサクラによって急激に上昇し、その後中央値66%で頭打ちとなった。この頭打ちの水準は、Asch型実験において人間で典型的に観察される30〜40%の誤答率を大きく上回る。
- 集団の規模よりも、誰が集団を構成しているかのほうが重要である。全員一致で誤答する2名のサクラは、半数が正答である10名のサクラよりも誤答確率を大きく上昇させた(0.31対0.20)。モデルは、より確信度の高い刺激においては同調が少なかった(Spearman ρ の中央値 = −0.91、32のモデル−課題の組み合わせのうち30で負値)。モデルが最も確信していた刺激においてさえ、同調バイアスはすべてのモデルおよび課題でゼロを上回ったままであった。
- モデルの行動は社会的インパクト理論の予測と一致した。サクラを専門家とラベル付けすると同調バイアスは最大0.13上昇し、子どもやチャットボットとラベル付けすると最大0.06低下した。「警察官」や「軍人」といった純粋な権威ラベルには一貫した効果がなく、同調が上昇したのはモデル−課題の組み合わせの約半数にとどまった。国籍の共有、さらには恣意的な集団ラベルの共有であっても、32すべての組み合わせで同調が上昇した。自分の回答が公開されるとモデルに伝えた場合、32の組み合わせのうち27で同調が上昇し、そのうち21では信頼区間がゼロを含まなかった。
